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この論文は、コンピュータのタイプトレーニングの工夫により、生徒の授業に対する集中力UPを可能にする指導法のひとつとしまとめたものである。


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平成13年8月30日

マルチメディア系列教諭 渡辺紀夫

早期におけるコンピュータキー入力操作技術

(タイプトレーニング)の習得の重要性と

指導法による二次的教育効果発生の検証

 

(まえがき)

 21世紀を向かえ、時代は
ITInformation Technology)時代へと改革が推し進められています。それ以前のハイテク時代やマルチメディア時代という流れをさらに進化させた、教育の現場ではより実践的技術力のある人材育成が求められるようになってきました。コンピュータ教育の初期の時代では文字を入力させたり、絵を描かせたりする程度の技術を主に行う教育がほとんどでした。ハイテク時代になると表計算やデータベースの取り扱いもできる教育に重点がおかれてきました。そしてマルチメディア時代になるとCGComputer Graphics)やDTMDesktop Music)や動画(Animation)などのコンピュータの操作から二次的に発生したデータ(芸術作品なども含む)の創作へと教育内容が変化してきました。そして、今やIT時代となり、今までのコンピュータ技術における操作と単一的なデータ処理を多目的かつ複合的に活用するとともに、インターネット技術も駆使して作り出された創作物を第三者へ、いかに効果的に伝達できるかといった、実践的な人材育成が重要となってきました。

いままでのように進化する技術に振り回された技術習得の伝授から、生徒個々の秘めた能力の自己開発の可能性にかけた、生徒自ら感じる「自己覚醒」と「自己の再発見」を短期間にかつ効率よく教育する指導法が模索され続けていました。そこで、その指導法の一方策としてIT時代となった現在もコンピュータの入力装置の主たる部分であるキーボードにおいて「キー入力技術の習得」に着目して、10年ほど前から試験的に実践してきたタイプトレーニングの蓄積してきたデータの分析をするとともに、そのデータから得られた効果が、授業展開する上で基礎技術習得から応用技術や専門的技術の習得にスムーズに以降できる効果を発揮するこという事実の再認識をするとともに、単純なタイプトレーニング指導法が授業中の集中力の向上という二次的効果を生む事実をここに報告します。

(コンピュータのキー入力操作技術のためのタイプとレーニングの必要性)

平成15年度より普通科では普通科「情報」という週2時間の2分の1時間から3分の2時間の実習を伴う情報教育をするカリキュラムが実施されます。これは高校の場合入学した1年次の1年間でコンピュータの操作をマスターし、あらゆる種類のソフトウェアを駆使して(表計算、CG、インターネット、ワープロ、プレゼンなど)、準備したデータからコンピュータ等を利用して加工・分析し、ワープロでまとめ、プレゼンテーション用ソフトウェアなどで第三者に結果を発表できる実践的技術の習得を目指したものです。

従来のワープロのみとか、表計算のみ、プログラミングのみ、といった単一的なソフトウェアの操作法習得のように、単一的な基礎技能では十分な結果を出すことができなくなってきました。普通科「情報」で求められる人材育成には、基礎をマスターした応用のできる積極的人材の育成に主眼が置かれており、この観点を踏まえて、短期間に多くの内容をマスターさせるためには、コンピュータ技術の基本であるキー入力が、正確かつ高速に、そして手元を見ずにキー操作できるブラインドタッチ(タッチタイプともいう)が必須といえます。ブラインドタッチがマスターできれば、教師が指導する内容を応用的な分野まで高めることが容易にでき、生徒のコンピュータ技能は飛躍的に向上するとともに、二次的に自信をつける生徒の育成もできるといえます。

 本校では従来、工業科では1年次に工業基礎や情報処理で単一的な実習テーマを基礎部分に限定して授業をし、2年次以降の専門科、専門系列の再配属によってより専門的な分野の技術習得を目指そうとしてきましたが、基礎部分でキー入力(ブラインドタッチ)を軽視してきたため、2年次以降の専門的領域の授業で生徒のキー操作が追いつかないという矛盾をきたしていました。また、小学科の意識が大きく、各科各系列の共通理解が十分にはかれなかった副産物として、2年次は似た内容の実習をするという場面も見受けられていました。

 一方職業科では平成15年度の新カリキュラムの普通科「情報」を前倒しで実施されている1年普通科の情報処理で平成12年度に「情報」講習会で受講してきたノウハウをベースに尚志独自のキー入力操作技術の指導法を新規構成された関係職員の共通理解の下、今回のタイプトレーニング指導法を実施し、形ある顕著な実績データが得られることができました。この結果はまだまだ過度期で3年間の生徒の追跡調査をもって、多くのデータが得られるものと思いますが、これから尚志がめざそうとする教育の具体的指導法のひとつとして提案できるものと確信しています。

 また教科のちがいはあれ他の授業でも指導法の工夫と職員の共通理解のもと継続的に実施できる指導法を模索すれば、いろいろな形で成果を出せるという証明になると思います。たとえば、授業開始前の豆テストや、読書タイムといったものも、タイプトレーニング指導法でえられるような効果を生み出すものとして、多くの先生方が認知していることがあります。

また、特殊な指導法で、授業中の集中力アップをするためのメンタルトレーニング法がありますが、本校の生徒を対象とする場合、普通科特別進学過程のように、クラス全体がまとまったクラスのような場合には有効的に指導することができても、男女混合の普通科や進学を主としない工業科のクラスでは、指導する以前の問題がたちはだかり、効果的な指導ができないということもあります。

このメンタルトレーニング法は具体的には、授業開始の導入段階の3,4分間行う技法で、静かに着席させた生徒に対し、教師が「静かに目を閉じなさい」、「手を机の上に手のひらを上にして置きなさい」「手のひらが熱くなるのを感じなさい」「熱くなってきましたね。」「つぎに、手をイスのわきにたらしなさい」「腕が重くなっていくのを感じなさい」「だんだん腕が重くなってきましたね」「それでは静かに目をあけなさい」「深く深呼吸して・・・・さあ、授業をはじめましょう」という内容のことを生徒にさせると比較的容易に以前とくらべて集中力がアップした授業が展開できるというものです。これを毎時繰り返せば、単独の教科のみならず、全教科で共通して実施すれば、クラス雰囲気全体が落ち着いた環境を作り出せるという二次的効果も生み出すことになります。しかし、これは前述したように、ある一定レベル以上のクラスに効果を発揮する指導法で、授業開始のチャイムと同時に席に着けないクラスでは非常に難しい指導法ともいえます。

一方、今回紹介するタイプトレーニングは工業科の実習や普通科の情報といったコンピュータ室を利用する時間の授業開始の10分から15分間を利用して前述したメンタルトレーニング法と同じ効果を引き出すことのできるものであることを証明しています。生徒にとってはコンピュータという興味関心の対象物が目の前にあり、自分で不可能と感じられるブラインドタッチが日々練習をしていくたびに上達が目に見えてわかるため、他の指導法とは違って即効性のある指導法といえます。


(コンピュータのキー入力とは)

 コンピュータはアルファベット26文字のキーと記号約12キーと数字10個のキーの約48種のキーがJISのアスキー配列で人間工学に基づいて配置されています。特にアルファベットは全世界共通の配列を採用しているので、アルファベットのキー配列を習得することで、国際的な競争にも対応できる技術を得ることができます。

 具体的には日本語の文章を入力する場合「高校」という文字は「こうこう」というひらがなを4回キー入力すればいいのですが、日本語のひらがなは全部で51音あり、これだけで、キーボードのほとんどのキーを利用するため、50ものキーの配置を短期間でかつ正確に覚えることは困難です。一方、同じ文字をローマ字でキー入力しようとすると「高校」という文字は「KOUKOU」という6文字のキー入力を必要とし、キーの入力回数の負担は増加するものの使用されるキーは英語のアルファベット26種だけなので、キー配列を覚えることはひらがなに比べて半分となり、短期間にキーを正確にかつ高速に入力する技術を習得することができます。よって後者のローマ字を用いる「ローマ字入力」というキー操作がコンピュータのキー入力操作技術習得にはより効果的に働くと考えられます。

 
図1.キー入力操作技術練習用ソフトウェア
(美佳タイプトレーナー:フリーウェア)

 

(キー入力の指導法の一例)

 キー操作はコンピュータをはじめた人ならば誰でも経験する最大のハードルで、ほ

とんどの人がこの段階でコンピュータにアレルギーを持ってしまう原因のひとつです。一方、このキー操作のハードルを越えられた人はプロ扱いされる領域まで加速する重要な要素のひとつともいえ、一旦習得したブラインドタッチは実践を積むにつれコンピュータを利用するさまざまアプリケーションの習得時にも短期間で習得できる効果を発揮します。

 学校教育では平成15年から普通科には「情報」という週2時間の実習を主とする授業が1年次から入り、初期の段階でコンピュータの技術習得をするようにカリキュラムが変わってきています。工業科では「工業基礎」という週3時間の実習が1年次にあり、コンピュータの基礎を学べます。

 キー入力の技術習得は早い段階で短期間に集中して毎日少しずつ繰り返し練習することが重要です。長期間にわたり不規則に練習したり必要以上に長時間練習することは効果が上がりません。よって以下のような手順でキー入力の練習をさせることが重要といえます

 

(具体的なタイプトレーニング指導法)

1. 授業開始にあわせ入室した生徒からコンピュータの起動をさせ、キー入力トレーニングプログラムを起動させる。

2. 10分間から15分間のキー入力トレーニングを集中してやるように支持する。

3. キー入力トレーニングの大半はホームポジションと呼ばれる基礎訓練をし、手元を一切見ないで(ブラインドタッチ)タイムを気にせず黙々と練習させる。

4. 指が温まったころに、単純な熟語入力のできるローマ字単語練習モードで1分間集中させキー入力の速度試験をさせ記録を取らせる。

5. 試験は何度チャレンジしてもよく、その日の最高記録(一分間に何回正確にキーを打てたか)を覚えてもらう。

6. 練習終了時に生徒全員から最高記録を聞きながら記録する。と同時に出席の確認とする。(※1)

7. このとき、大きな声で記録を聞きながら、さりげなく前回の記録と比較して誉めてやると、やる気を継続させてくれるとともに、他人の記録の変化が自分とのライバル意識に火をつける効果を生む。

8. 記載した記録はデータベース化し、グラフにした図を折に触れクラスに掲示し、毎時の記録の向上を生徒に見せて上げるとともに、誉めてやることで、自己の技術向上の確認をさせることができ意欲の向上につながる。

9. 全クラスを対象とする場合は、他のクラスの記録も同時に掲載し、井の中の蛙にならないように、グローバルなライバル意識を養わせる。

10.      やってはいけない行為は、記録が伸びない場合に生徒をけなす行為と、記録だけに固執して手元を見ながらキー操作を適当にしている生徒を放置すること、そして、毎時記録を取らず、ただやりっぱなしにしてしまうことの3点に気をつけることです。

 

(※1)授業のベルにあわせ、礼をすると、実習室に早くから来ていた生徒のキー入力の練習が中断されて、集中力を欠くことになるので、授業開始後は少数の遅刻の生徒のみ生活指導をするようにするとよい。教師の負担も数名の生徒の生活指導に集中できるのでクラスの雰囲気改善には効果的である。練習終了後は記録を聞き、それを出欠の確認とすることで、時間の有効利用をする。このとき授業開始の礼を改めてしてもよい。注意する点は生徒が集中している時間を途切れさせないことです。遅刻してくる生徒にとって、真剣に集中するクラスに入ることはかなりの衝撃をうけると同時に、極自然に静かに入室しようとする雰囲気をかもし出します。また、集中できない生徒にもクラスの静寂な練習風景が「自分もこれぐらいの時間なら我慢できる」と思わせることができ、10分ないし15分の集中する静寂な時間をクラスに与えることが、その後の授業展開における集中力アップの効果をも生むことになります。


(データ分析結果)

 下図は平成13年度入学生の4月から6月までの約3ヶ月、キー入力操作技術の成績を記録したものを表にしたものです。クラスによって練習の回数は若干ことなるものの、どのクラスも練習の回数に比例してキー操作の技術が向上しているのがうかがえます。とくに、1G7のクラスは練習時間のクラス雰囲気がよく、練習を繰り返すほどに技術が急速に向上しているのがわかります。各クラスの技術の向上で練習2回目に成績が下がっているのは、キー入力で重要なブラインドタッチ(キーボードを見ないで正確にキーを打つ技術)とホームポジション(決められた指で決められたキーを押す技術)を指導しはじめたことによる指の強制にかかったものです。

 

 

表1.平成13年度1年G科ワープロ検定4級合格率

 

 

受験者数

合格者数

合格率

MAX平均

伸び率

G1

40

18

45.0

91.0

4.3

G2

39

23

59.0

94.2

5.5

G3

37

28

75.7

125.0

4.7

G4

39

27

69.2

91.4

5.5

G5

36

18

50.0

98.6

7.0

G6

39

30

76.9

103.0

5.2

G7

40

38

95.0

129.0

8.7

全クラス

270

182

67.3

104.6

5.8

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ワープロ検定直前のキー入力記録のグラフの見方と分析結果)

 縦軸はキー入力練習用のソフトウェアで記録した生徒の最高記録で、1分間にキーを何回正確に打てたかの打鍵回数で、横軸は生徒を表しています。グラフの左半分の折れ線はワープロ実務検定の不合格者の記録で、右半分の折れ線は合格者の記録です。ワープロ実務検定(今回は4級)の合格ラインは1分間に100回のローマ字のキー入力ができるかできないかが大体の目安となり、1分間に100回以上のキー入力ができても不合格になったり、100回未満でも合格している生徒がいるのはそのときの生徒の体調と他の要因による許容誤差と考えられます。

 合格者の割合が多いクラスは他のクラスに比べ集中力のある比較的良いクラスといわれています。しかし、どのクラスも2ヶ月という短い期間で全クラス平均合格率67.3%と高い合格率を上げていることは、「鉄は熱いうちに打て」ということわざのように、できるだけ早い時期に正しいキー入力操作技術を習得させれば、ワープロ実務検定の合格は十分可能ということがいえます。今回のワープロ実務検定では全クラスに強制的に検定を受験してもらい、検定合格のための授業も若干したものの、生徒に「やれば誰でもできる」という自信を与えながら、実際の検定を受験することで、自分の能力の再確認をさせ、次の検定に向けての意欲とキー操作技術の練習の意義と「継続は力なり」の体験をさせた結果となりました。

 各クラスのグラフで合格者と不合格者の折れ線が中央付近で直線的に連続していない部分が大きいクラスはやや集中力に欠ける生徒がいるということをあらわしています。また、直線的に連続しているクラスはほぼ全員の意識が前向きに動いているクラスといえます。打鍵数の平均の回数が多いクラスなのに合格率が低いのは集中力なない生徒が若干いることと打鍵数の非常に高い生徒が混じっていることによるクラス平均の打鍵数のアップになっていることによるものです。








(検定後の生徒の感想にみる意欲向上の証明)

 受験した7クラス全員に検定試験直後に2ヶ月間の授業とキー操作技術のための練習の感想文を書いてもらいました。そのほとんどが、コンピュータのキー入力操作技術に関して正しい操作方法の習得の重要性と日々少しずつでも努力を積み重ねることが、実力向上に非常に重要であることの再認識をさせてくれたという内容のものでした。また、授業開始の10分間から15分間にコンピュータに向かい静かにキー操作技術の練習をしていると、いつの間に集中している自分の存在に気づき、前よりもより向上したいという欲求を自発的に起こさせる「魔法」のようなものと、前向きに意識する自分自身の性格の変化に驚き、やるたびに少しずつではあるが、着実に記録が伸びる喜び、そして検定という形ある目標に向かって努力している自分の存在に誰もが驚き、感動し、自信をつけている様子が読み取れました。

 

生徒Aの感想:

「最初はこの授業でコンピュータにさわるのもいやだったが、だんだんにキーを打てるようになり、気がつけば40回しか打てなかった自分が100回を越すようになっていて驚いた。」

 

生徒Bの感想:

「コンピュータは中学校のとき、何度かさわっていたけど、高校にきて、キーの正しい打ち方があることをはじめて知った。」

 

生徒Cの感想:

 「毎週1度短い時間だけどキーの練習をしていって、少しずつだけど記録が伸びているのがわかって楽しい。今回のワープロ4級の試験が不合格でもまたチャレンジして卒業までに1級に合格したいと思った。」

 

生徒Dの感想:

 「コンピュータにさわるのも嫌いだったけど、気がつけば一生懸命にのめりこんでいる自分に気がつき自分自身が驚いている。俺にもやればできると思った。」


(3年マルチメディア系列生徒の2年次からのタイプ記録の追跡調査)

図 1分間に入力したキーの打鍵数の変化

 

 上図は平成11年度入学3年マルチメディア系列生徒26名の毎時の授業開始10分から15分間キー入力の記録の推移を2年間近く生徒全員のデータを取り続けたものです。1年次にコンピュータの基礎は週3時間の工業基礎で当時の工業基礎の担当者へ依頼をし、若干のタイプ練習を強制していただいた生徒たちです。2年次進級時の4月クラス平均は1分間に114回(最高186回、最低75回)という記録が3年次8月にはクラス平均は1分間に334回(最高464回、最低206回)という成長を遂げています。1分間に100回のキー入力がワープロ実務検定4級合格の目安で、150回以上で3級、200回以上で2級、300回以上で1級という大体の目安が累積したデータの分析から得られています。

 上図のように3年マルチメディア系列の生徒全員がワープロ検定2級クラスの能力をもっていることとなり、生徒の起用さや能力の個人差は日々の訓練で最低到達目標を100%クリアできる証明ともなるデータが得られました。これは、一般に普通科よりも成績の上で能力が低いといわれてきた生徒の層のさらに最下位に位置する生徒でも毎時訓練を積めば一定の成果がえられ、落ちこぼれのない授業展開ができる証明ともいえます。

 (マルチメディア系列生徒の2年次からのタイプ記録の追跡調査)

 下の表は平成13年度3年マルチメディア系列の生徒を1年次末から3年次の8月までキー入力操作技術の練習時に記録を聞いたものをクラスの平均値を出し、クラス全体の記録がどう推移するか調査したものです。

一年次末は1分間に100回以上、二年次末で240回以上、3年次前期終了時で320回以上のきれいな成績向上がうかがえます。これは工業科の生徒のため、1年次から毎週定期的に実習を行えるため、長期の休業日の期間を除いて、継続的なキー入力操作技術が行えなかった時期を除いては定期的に練習が行えるため、技術向上は比例的に向上しているのがわかります。

下図の注目する点は左図の2年次はじめの練習効果で急激に加速している点で、期間として2,3ヶ月は急激に加速し、その後一分間に200回以上のキー操作ができてくると練習日数に比例して記録がのびてくるということです。これは、2年次から本格的なタイプトレーニングを指導したことにより加速したもので、1年次の早い段階から適切なタイプトレーニングをすれば、クラス全体がワープロ実務検定1級クラスの能力を身に付けられる証ともいえます。右図は1年次タイプトレーニングをしなかった年のもので、1年次に多少タイプトレーニングした生徒と明らかに成績向上に差がついたといえます。

 左図:平成13年度3年マルチ生徒     右図:平成12年度3年マルチ生徒


(キー入力操作技術練習の様子)

写真:1年普通科の練習風景(姿勢がやや前傾で目線がキーをみている)

    一分間に約100回程度のキー入力する生徒たち

 

写真:3年マルチメディア系列の練習風景(姿勢がよく、目線は画面のみ)

    一分間に約400回程度のキー入力する生徒たち

 

 写真を見る様子から、1年時の生徒はまだまだ、姿勢が悪く、キーボードを見てしまう生徒が多いのがわかります。指使いも正しい指で全指が使われておらず、中には人差し指だけの生徒もいます。3年次になると高速なブラインドタッチをマスターし、高速タイプをするため姿勢も自然によくなり、キーのタイプ音もリズミカルで軽快な音でキーをたたいています。継続的な指導の効果は写真からもわかるように、ただ単純に高速ブラインドタッチができるだけの技術的側面だけでなく、2次的効果である集中力アップがでているのが写真の雰囲気からもわかると思います。


(まとめ)

 平成13年の1年普通科全クラスを対象に実施させていただいた、授業開始時10分から15分間のコンピュータキー入力操作技術の練習指導は、前述の結果ようにコンピュータ操作技術の基礎の習得として非常に重要なポイントを抑えられたとともに、2次的に発生した効果として、授業開始時の精神集中が、残りの授業展開時の集中力持続へとつながり、授業導入の指導の効果的な指導法として確立されている実例となったことを証明してくれました。

 さらに、長期継続の指導により生徒が挫折することなく、毎時自分自身に目標をつけ前向きに技能を向上させようとする自発的な衝動を起こさせる効果は、他の授業にも何らかの形で影響を及ぼしているものと思われます。たとえば、授業開始時になかなか席につかない生徒やクラスが、極自然に授業開始できる状態になって授業展開が比較的しやすい状態になっていないかなどです。

 今回の結果は本来、専門技能を修得する工業科には必要な指導法の一つといえますが、残念ながら共通理解が図れず、現在まで継続指導ができませんでした。私の担当したクラス(ハイテク電子科とマルチメディア系列)を対象に2年次より毎時繰り返し指導してきた指導のデータを見てもわかるとおり、継続することの大切さ、生徒の能力の覚醒タイミング、生徒への指導の工夫により、教師の想像をはるかに越える能力を引き出せる生徒も数多くいることの事実は、今、工業科・普通科の枠を超えて基礎学力向上と同じように基礎技能向上が根本的に将来的な意味も含めて重要であることの証明といえます。

 最後に、長年に渡り生徒を実験台にコンピュータのキー入力操作技術の指導をしてきて感じたことを箇条書きにまとめると、

(1)   授業開始の導入法の一つとして「タイプトレーニング」は重要である。

(2)   生徒の能力は鍛えれば無限に成長する。

(3)   生徒の個人差は継続指導により最低到達目標を全員がクリアできる。

(4)   コンピュータのキー入力ができることは生徒への大きな自信となる。

(5)   他の授業展開にも大きな影響を及ぼす。

(6)   学年が上がるたびに応用学習を展開しやすくなる。

(7)   能力の低いとレッテルの貼られた生徒にとって、希望の光を照らす。

(8)   教師授業開始時の生活指導がやりやすくなる。

(9)   授業中の集中力育成の効果が非常に大きい。


(参考)

 下の文章は、今回使用したキー入力操作技術の練習用ソフトウェア「美佳タイプトレーナー」の開発者に出した電子メールの返事です。開発者である今村さんは以前から学校教育ではキー操作ができることがコンピュータ理解の第一歩として非常に重要だと考え、自ら学校関係で利用してもらうためのソフトウェアの開発をしてこられた方です。今から10年以上前から当時windowsパソコンがない時代、キー入力練習用のソフトウェアを開発しており、これを6,7年前に本校の生徒に試験的に採用し練習をさせてきた経験的に蓄積されたノウハウを電子メールでやり取りし、指導法の模索を検討しながら、ここ数年で形ある指導法の確立ができたという経緯がありました。今年は本格的にこの指導法を1年普通科の実習に採用してワープロ実務検定という試験を目標にデータ分析できた結果を開発者である今村さんに報告したときのものです。

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尚志高等学校渡辺さん
お手紙ありがとうございます。
美佳のタイプトレーナを授業で使っていただき、ありがとうございます。
もともと、教育用に作ったタイプ練習ソフトですので、
高校で使っていただければ、大変うれしいです。
最近の学生は、子供の頃から、ゲーム機などに慣れ親しんでいるせいもあって、
タッチタイプをかなり簡単にマスターしてしまうようです。
小学生にもタッチタイプを教えているところがあるそうです。
最近は音声認識ワープロなども開発されているようですが
当分は、キーボード入力が主流の時代が続くのではと思います。
タッチタイプは将来就職してから、とても役に立つ技術ですので、
高校の時しっかり、マスターしておくのはとてもよいことと思います。

早いもので、私が美佳タイプのシリーズを作り始めてから、
ことしで10年がたちました。
当時は、コンピュータの教育も一部の大学などで行われていただけでした。
それから10年たって、中学や高校でも、コンピュータの実習が行われるようになり、
タッチタイプの指導も行われるようになったのは、感慨が深い思いがします。

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(参考文献)

 

「美佳のタイプトレーナ」開発者今村 二朗のホームページ

http://www.asahi-net.or.jp/~BG8J-IMMR/

 

(謝辞)

 今回このような論文がまとまりましたことは、長年電子技術科という教材開発に重点をおき、先駆的な教材や指導法を展開されてこられた先輩先生方のご指導とご理解があったからと感謝しております。若輩の教員に対し、いろいろな実験的な研究をさせていただき長期に渡りデータの収集や指導実践をしていただいたことに深くお礼申し上げます。

 また、今年平成13年度からは普通科の「情報処理」という授業のスタッフの一員として、新たに構成された教科の職員グループにおいて、タイプトレーニングを全スタッフ一丸となり実践していただき、想像以上の成果を上げることができましたことは、非常に感動できることであり、大変感謝するものであります。

 ここに改めてご協力いただきました先生方に感謝申し上げます。ありがとうございました。また、日々練習を積み、努力している全生徒に感謝いたします。